ここ最近、NTTドコモの利用者から、通信障害が起きている訳でもないにもかかわらず「通信速度が遅い」「つながらない」といった不満の声を多く聞く。SNSにもそうした声が少なからず上がっており、ユーザーはかなり不満を募らせているようだ。
一方で、他社のネットワークを利用しているユーザーからは、そうした声はあまり聞こえてこない。一体なぜ、ドコモの回線だけがつながりづらくなっているのか。ドコモが2023年4月26日に実施した5Gネットワーク戦略に関する記者説明会で、その原因が明らかにされている。
同社の説明によると、その背景にあるのはトラフィックの増大だ。動画など通信量を多く消費するサービスの増加に加え、コロナ禍の影響が小さくなり外出する人が増えたことで、自宅の固定回線に流れていた通信量がモバイルの回線に移ってきているようだ。
そこで、ドコモは増大するトラフィックへの対処を進めており、その軸となっているのが「瞬速5G」だ。これは、4G向けの周波数帯を5Gに転用するのではなく、最初から5G向けに割り当てられた3.7GHz帯や4.5GHz帯、28GHz帯を用いた5Gネットワークを指す。これら周波数は、5Gでの利用を前提としており、帯域幅が従来よりも広く、大容量通信を実現できる。ドコモは5Gのサービス開始当初から「瞬速5G」に重点を置いた整備を進めている。
同社は、主としてトラフィックが大きい都市部で瞬足5Gを積極展開している。しかし、2023年時点では整備途上となっており、整備済、整備中、今後整備予定のエリアが混在している。そして、今回の「つながらない」問題は、瞬足5Gが整備途上であるという環境が大きく影響して発生したとドコモは説明している。
5Gの整備途上で発生したトラブルといえば、2021年頃に話題となった「パケ止まり」が思い起こされる。これは主として5Gの通信が入るかどうかの境界線上で起きたもので、電波が弱い場所でも5Gへの接続を優先した結果、接続をうまく確立できず通信ができなくなっていた。
だが、今回の事象はそれとは全く異なる内容のようだ。東京でいえば山手線沿線など、トラフィックが特に大きい都市部を中心に起きている。より具体的には、先に触れた瞬速5Gの整備がなされておらず4Gのみで通信しているエリアで起きているという。トラフィックの急増で4Gの容量がひっ迫し、対応しきれなくなっていることが、つながりにくさの原因であるという。
瞬速5Gの整備において、地権者との交渉に時間がかかるケースがあることや、都心部の大規模な再開発で基地局が撤去されたり、人の流れが変わったりしたことで、当初の予想と異なる状況が生まれていることが背景にあるようだ。
中でも大きな影響が出ているのがいわゆる「プラチナバンド」の800MHz帯だという。一部のエリアでは、屋外基地局の電波を用いて屋内をカバーしている場合もある。これを起因としてトラフィックのバランスが崩れ、最も電波が飛びやすい800MHz帯にトラフィックが集中し、ひっ迫してしまうケースが多いと説明する。
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